米運営の放送のチベット報道、中国を怒らす

米運営の放送のチベット報道、中国を怒らす
妨害電波への完全なる撃退法はゴムバンド
NICHOLAS ZAMISKA and GEOFFREY A. FOWLER
ウォールストリート・ジャーナル(4月29日)

 【香港】先月のチベットでの騒乱の最初の報道は、主要な新聞や通信社あるいはテレビ局からでもなかった。それは米国が出資している短波放送からであった。その放送は聴取者に、アルミ箔とベニヤ板、ゴムバンドで中国の妨害電波をかいくぐるよう助言している。

 現在年間3400万ドルの議会からの予算で、ワシントンに本部のあるラジオ・フリー・アジア(RFA)は、中国語、チベット語、中国の新疆地方のトルコ語系の言葉であるウイグル語など9の言語でアジアに関するニュースを全域に向けて放送している。
 
 チベットでの危機についてのRFAの報道は、米国政府の冷戦時代の放送をめぐる中国との昔からの面倒事を再燃させた。一方で、放送の使命をめぐる以前からある問題も浮き彫りにさせた。つまりその放送はニュース機関なのか、それとも宣伝機関なのかである。

 外務省広報官によると、中国政府はその放送が「中国について客観的でなく、不公正でバランスの取れていない報道を長期間にわたってしてきた」と主張する。 「多くの外国メディアがチベットについてのその放送のニュースを報じたことをわれわれは知っている。そうした不正確なニュースは、中国人民と外国のメディア専門家から多くの非難を招いている。われわれはRFAが今後、中国について客観的で、公正でバランスのとれた真の情報を報じるように望む」と広報官は述べた。彼女は、その誤りが何を指すのか特定しなかった。

 RFAは、正当な仕事をしていると主張する。同放送の広報官、Sarah Jackson-Hanは「われわれは第一番に最良で、最も信頼のおけるニュースを得ようと激しく競争している」と言う。

 RFAはチベットに有給のスタッフを持たない。最近の騒乱まで、頻繁にチベットに旅行していた2人のフリーの記者がいる。チベット語の番組制作をするスタッフはワシントンに30人以上いる。チベットの一部の僧侶は、RFAのニュースはいつも聞いていると言う。

 チベットでの騒乱についてのスクープは、RFAのトークショーから出た。ワシントンの3月10日の朝、RFAの記者はいつもの筋からスカイプを通じたインスタント・メッセージを受け取った。そのメッセージは、ラサに向かっていた約300人の僧侶が中国の警察に阻止されたというものであった。「治安軍と僧侶の間で衝突もあった」とメッセージは伝え、「僧侶の一部は負傷し、50人から60人が拘束された」と述べていた。

 スカイプを使って、RFAの記者はチベットにいる別の筋と連絡を取り、その筋は拘束のニュースを裏付けた。RFAはワシントン本部のスタジオからそのニュースを生で流し、中国全土に放送した。

 RFAは暴動での死者が出たことも最初に報じた。Jackson-Han氏によると、RFAは複数の人々から通報を受けた。彼らは事件を目撃した。ひとりは「2人が警察に撃たれて、彼の真ん前で死んだのを実際に見た」と彼女は語った。

 RFAの報道は、ウォールストリート・ジャーナル紙やニューヨーク・タイムズ紙など世界中の新聞に引用された。中国政府は、ラサでの暴動で約20人が死亡し、そのほとんどが漢族であると言っている。チベット亡命グループは、その後の鎮圧で100人以上のチベット人が殺されたと言う。同放送はその後、反政府分離主義者に直面している新疆でのウイグル族の騒乱についてのニュースも報じた。

誰も耳を傾けない孤独な声

 RFAは、太平洋の北マリアナ諸島と公表されていない10数か所の地点から放送されている。その放送は短波に依存している。なぜなら、気候や時刻、太陽からのエネルギーの爆発次第であるが、1台の送信機で全大陸に向けて放送することができるからである。その技術は1920年代に開発され、英帝国がロンドンと遠く離れた植民地の間でメッセージを伝えるために使われた。

 中国政府はRFAの放送を、同じ周波数に京劇や葬式の音楽、ゴング、雑音、その他の干渉を放送して妨害し、事実上、RFAの送信をブロックしている。中国の国家広播電影電視総局はRFAの妨害についての質問に返答しなかった。

音楽で妨害されるRFAチベット語放送

 RFAのウェブサイトも中国でブロックされているが、妨害電波がRFAを完全にはかき消すことがないようにラジオのアンテナをどのように改造するかのやり方を説明している。必要なものは4つの留め金、2個のゴムバンドかひも、2枚のアルミ箔、2本の小さなワイヤー、木の板。「ベニヤ板か似たようなもので大丈夫」と説明は言う。

 RFAは1994年に議会によって設立された。それは「米国の声」も運営する放送理事会の下にある。RFAの幹部は、同放送が中央情報局(CIA)と関係があるとの主張を否定する。1950年代に同じ名前で運営し、現在の放送局とは関係がない放送局はCIAと関係があったかもしれない、とRFAは言う。

 放送理事会のジェイムズ・グラスマン会長は最近、Asia Times Onlineへの手紙で、RFAのスクープは「苦労して得られてきた。主に、信頼のおける筋を育てることによってである」と述べた。同会長は、香港に本部のあるインターネットのサイトであるAsia Times Onlineが、RFAはCIAのために働いているという記事を掲載したため、その手紙を出した。

 RFAの批判者は、同放送が中国の反体制派や内紛についてのニュースに多くの放送時間を割き過ぎていると言う。コロンビア・ジャーナリズム・レビューの1999年の記事でVOAのマーク・ホプキンス元支局長は、RFAとその姉妹局での「番組での偏向は明らかである」と書いた。そうした局は中立であるべきという設立時の指示があるが、米国の放送制作責任者は「外国人の考え方、住み方、統治のされ方に影響を及ぼすよう使命を持っていると信じている」と彼は書いた。

再び最新の話題

 広報文化・交流担当国務次官のカレン・ヒューズの後任としてグラスマン氏を指名したことで、政府運営の放送の客観性が再び政治的な問題になった。1月に議会で証言に立ったグラスマン氏は、イランでの放送が十分に親米的になっていないという非難を受けた。

 「われわれはプロパガンダをしているのではない」とグラスマン氏は言った。彼はイスラム過激派のメッセージに積極的に対抗するために働くと語った。だが、彼は「米国の声」などの放送は「正直でなければならない」と強調した。グラスマン氏の指名はまで承認されていない。

 2004年に引退したRFAの創立社長のDick Richterは、RFAのアイディアを最初に聞いた時は、不審に思ったという。「放送の主な目的は政府の右派共和党派の要求を満たし、基本的に主な目的は“アカを殺す”ことになる放送になるだろうと考えた」と彼は言う。「だが、わたしは“それはわれわれがしようとしていることではない”と言った。法案は、われわれは客観的でなければならないと言っている」。

 中国やアジアでRFAの聴取者がどれだけいるか信頼できる推計がない。「対象にしている地域のほとんどで、人々は信用できる人以外には聞いていることを隠している。北朝鮮では、聴取者は、配偶者や特に子供たちにも聞いていることを隠すとわれわれに語った」とRFAの対外関係ディレクターのJohn Estrellaは語る。

 RFAの記者は、カバーする地域の多くで入ることを公的に許されていない。記者たちは、電話やスカイプなどの暗号化されたインターネットの通信プログラムに頼っているという。Richter氏によると、RFAは人権団体や労働組織と関係のある人々を雇うこともある。なぜなら、彼らは情報通であるからである。

 RFAのコールイン・ショーでは、聴取者はワシントンなどのRFAのオフィスの番号へコレクトコールをかけてくる。そして、放送局が情報筋を構築し、情報を集めるのを助ける。RFAによると、コールインの番号は時々、コンピュータの自動ダイヤルによる妨害を受けるという。

 Jackson-Han氏によると、RFAは手掛かりを得るために、タイとミャンマーの国境地帯のジャングルなどジャーナリストの立ち入りが禁止されている場所へ密かに記者を派遣した。中国の病院が臓器を売るために患者から摘出しているという情報を得て、ひとりの記者がその病院を隈なく回った。「われわれの記者は臓器摘出を確認できなかった、それでその話には触れなかった」とJackson-Han氏は言う。
                                               (翻訳 鳥居英晴)

チベット運動はどこから資金を得ているのか?

 チベット問題をめぐって一部に、チベット亡命グループと米国の諜報機関とのつながりを指摘し、今回の暴動の背後に米国がいると主張する論調がある。シンガポールのストレーツ・タイムズ紙のThe crimson revolution’s true colours (深紅色革命の真の色)と題する記事(4月22日)もそのひとつである。香港駐在の程翔記者が書いている。

 米国の新聞グルーブ大手のマクラッチー系紙北京支局長ティム・ジョンソンはブログで、この記事を取り上げている。

 ストレーツ・タイムズのサイト記事は有料であるが、程記者の記事はニューヨーク・タイムズ紙のハワード・フレンチ記者のブログにコピーされているので読める。程記者は2005年に台湾のためにスパイ活動をしていたとして中国当局に逮捕され、懲役5年の実刑判決を受けていたが、今年2月に仮釈放されたばかりだ。

 程記者のネタもとはウィリアム・エングダールの Risky Geopolitical Game: Washington Plays ‘Tibet Roulette’ with Chinaという記事。この記事はエングダールのサイトとカナダのミシェル・チョスドフスキー教授の左翼サイトGlobal Researchにも掲載されている。

 程記者の記事は、チベット亡命グループへの米国の資金援助はチベットでの「カラー革命」に相当するとしている。「カラー革命」というのは、ウクライナの「オレンジ革命」やグルジアの「バラ革命」などをさす。チベットの場合は、僧侶の袈裟の色の深紅色革命」であるという。

  記事はエングダールを引用して、議会から資金を得ているNational Endowment for Democracy(NED)を通して、米国はチベットを不安定にさせるよう煽っているとする。NEDが支援しているチベット亡命組織として、Gu-Chu-Sum (元政治犯協会) Movement of Tibet; the International Campaign for Tibet; the Tibetan Women’s Association; the Longsho Youth Movement of Tibet; and the Voice of Tibetの5つの組織を挙げている。

 同記事は「それらのグループは、インドにいるチベット人にチベットまで抗議のデモ行進を組織しようとし、チベットでの最近の暴動を組織するのに関与した。NEDの資金はほとんど全部が米政府から出ている」と述べている。

 ジョンソン記者は、NEDが資金を出し、Tibetan People’s Uprising Movementに入っいているグループの一部がチベットの独立を求めているのは疑ないとしながらも、資金の水準は非常に低いものであると言う。

 程記者の記事は米国の団体として、Freedom House、ジョージ・ソロスが関係したTrace Foundation、ソロスと関係のある Albert Einstein Institution、ニューヨークに本部があるTibet Fundを挙げている。ドイツの自由民主党と関係のあるシンクタンクFriedrich Naumann Foundationも挙げている。

 ジョンソン記者によれば、ロンドンにあるTibetan House Trustも重要な資金源であるという。ジョンソン記者が手に入れた2006年にNEDがそれらの団体に提供した資金の内訳は以下の通りである。ジョンソン記者は、それらの資金は事務所の経費をカバーする程度の額で、「この種の資金である国の政治体制が転覆できるなら、 多くの者が敵となるであろう」としている。

Gu-Chu-Sum Movement of Tibet -- $40,000 -- To document the situation of political prisoners in Tibet and provide support for political prisoners in Tibet and former political prisoners in exile.

International Campaign for Tibet -- $53,000 -- To increase understanding between Tibetans and Chinese by providing greater access to information about Tibet. The organization will facilitate interaction between Tibetan and Chinese officials, academics, and the public through conferences, and the publication of a Chinese-language newsletter and website.

Khawa Karpo Tibet Cultural Centre Charitable Trust -- $20,000 -- To provide news and analysis to the Tibetan public and promote greater discussion and debate on current issues related to Tibet and Tibetans. Khawa Karpo will publish the Tibetan-language newspaper, Bo-Kyi-Bang-Chen (Tibet Express), three times per month.

Longsho Youth Movement of Tibet -- $15,000 -- To build leadership skills, promote cultural and political awareness of Tibet, and encourage greater civic engagement among Tibetan youth.

Tibet Museum -- $15,500 -- To preserve and present material related to modern Tibetan history and to educate visitors about the Tibetan culture and people.

Tibetan Literacy Society -- $28,500 -- To provide the Tibetan public accurate information on developments in Tibet and in the exile community, and to promote open discussion among intellectuals and a general readership on civic issues, including human rights and democracy.

Tibetan Parliamentary and Policy Research Centre -- $20,000 -- To strengthen local Tibetan assemblies, the first level government of the Tibetan government-in-exile.

Tibetan Review -- $26,000 -- To promote freedom of press and understanding of democratic concepts in the Tibetan exile community. Tibetan Review, a monthly English-language news magazine, will provide Tibet-related news and insightful opinion pieces and editorials.

Tibetan Women's Association -- $30,000 -- To promote the social, political, and economic empowerment of Tibetan refugee women and raise awareness of human rights violations against women in Tibet.

Tibetan Writers Abroad PEN Center -- $10,000 -- To preserve Tibetan literature and culture and protect and support Tibetan writers in Tibet. The Tibetan PEN Center will translate essays and other written materials into Tibetan, much of it originally published in Chinese.

Voice of Tibet -- $35,000 -- To encourage and sustain independent public opinion inside Tibet and to familiarize Tibetans with the ideals of democracy and human rights. The Voice of Tibet, an independent, Tibetan-language shortwave radio station, will broadcast regular news about Tibet, the Tibetan exile community, and the Tibetan government-in-exile to listeners in Tibet and in exile in neighboring countries.

 「わたしの即席の分析は、こうしたグループを中国を不安定化させるための西側の秘密の陰謀のためのトロイの木馬と見なす人たちは、間違った問題を見ている」とジョンソン記者は言う。
 
 「チベット問題の真の力は、西洋人の大衆にアピールするところにある。ダライ・ラマは西側のスタジアムをいっぱいにする。チケットはすぐに売り切れてしまう。大中国で最も知られた人物である。胡錦濤や温家宝よりも知られ、恐らく毛よりも知られているであろう」「ダライ・ラマは多くの“ソフト・パワー”を持っている。これはメディアが作り出したものだとはわたしは思わない。ダライ・ラマが慈悲と非暴力を語ること、それはほとんどの中国人は偽善的と考えるが、中国の外では強く共鳴する。これがもしそうなら、中国はLongsho Youth Movement of Tibetへの15000ドルなどについて懸念して、誤解している。思想の戦いにもっと心配するべきだ」


世界の知識人100人 Foreign Policyが投票呼びかけ

 米雑誌Foreign Policyが世界の知識人トップ5を選ぶ投票を行っている。同誌が選んだ100人の知識人の中から5人を選んで投票するように求めている。

 同誌が選んだ基準は、特定の分野で著名であり、自国を越えた幅広い議論に影響を及ぼす能力を持った人物。

 100人の内訳は、政治学者17人、経済学者15人、哲学者、科学者、ジャーナリストがそれぞれ12人、指導者、歴史家、活動家がそれぞれ6人、宗教指導者4人、環境活動家2人となっている。地域別では、北米36人、欧州30人、アジア12人、中東11人、ラテンアメリカ、サハラ以南アフリカがそれぞれ4人、東南アジア・オセアニア3人となっている。日本人は含まれていない。

 リストに載せるべきだという候補者の名前も書くように求めている。締切は5月15日。


Aitzaz Ahsan(アイザズ・アーサン)  パキスタン 弁護士・政治家
Shurin Ebadi(シリン・エバディ)  イラン 弁護士・人権活動家(ノーベル平和賞受賞者)
胡舒立(Hui Shuli)         中国    ジャーナリスト(「財経」誌編集長)
Ashis Nandy(アシシュ・ナンディ) インド 政治心理学者
Amartya Sen(アマルティア・セン) インド 開発経済学者(ノーベル経済学賞受賞者)
Kwame Anthony Appiah(クワメ・アンソニー・アピアー) ガーナ/米国 哲学者
Umberto Eco(ウンベルト・エーコ)   イタリア 中世研究家・作家
Samuel Huntington(サミュエル・ハンチントン) 米国 政治学者
Sunita Narain(スニタ・ナライン)    インド  環境活動家
Lilia Shevtsova(リリア・シェフツォーワ)  ロシア 政治学者

Anne Applebaum(アン・アップルバウム) 米国 ジャーナリスト・歴史家
樊綱(Fan Gang) 中国 経済学者 (中国経済改革研究基金会国民経済研究所所長)
Michael Ignatieff(マイケル・イグナティエフ) カナダ 人権・理論家・政治家
Martha Nussbaum(マーサ・ヌスバウム) 米国  哲学者
Peter Singer(ピーター・シンガー) オーストラリア 哲学者
Jacques Attali(ジャック・アタリ) フランス 経済学者・作家
Drew Gilpin Faust(ドルー・ギルピン・ファウスト) 米国 ハーバード大学長・歴史家
Tony Judt(トニー・ジャット) 英国  歴史家
Sari Nusseibeh(サリー・ヌセイベ)  パレスチナ  外交官・哲学者
Lee Smolin(リー・スモーリン) 米国 物理学者

George Ayittey(ジョージ・アイテイ)    ガーナ 経済学者
Niall Ferguson(ニオール・ファーガソン)  英国  歴史家
Robert Kagan(ロバート・ケーガン)   米国 作家・政治コメンテーター
Amos Oz(アモス・オズ)   イスラエル 作家・ジャーナリスト
Abdolkarim Soroush(アブドルカリム・ソルシュ)  イラン 宗教理論家
Daniel Barenboim(ダニエル・バレンボイム) イスラエル 指揮者・ピアニスト・平和活動家
Alain Finkielkraut(アラン・フィンケルクロート) フランス エッセイスト・哲学者
Daniel Kahneman(ダニエル・カーネマン) イスラエル/米国 心理学者(ノーベル経済学賞受賞者)
Orhan Pamuk(オルハン・パムク) トルコ 作家(ノーベル文学賞受賞者)
Wole Soyinka(ウォレ・ショインカ) ナイジェリア 劇作家・活動家(ノーベル文学賞受賞者)

Anies Baswedan(アニス・バスウェダン)   インドネシア 大学長・政治アナリスト
Thomas Friedman(トーマス・フリードマン) 米国  ジャーナリスト・コラムニスト
Garry Kasparov(ガリル・カスパロフ)   ロシア 民主活動家・チェス世界チャンピオン
David Petraeus(デビッド・ペトレイアス) 米国 軍戦略家(米中央軍司令官)
Michael Spence(マイケル・スペンス)  米国  経済学者(ノーベル経済学賞受賞者)
Pope Benedict XVI(ローマ法王・ベネディクト16世) ドイツ/バチカン 宗教指導者・神学者
Francis Fukuyama(フランシス・フクヤマ)  米国 政治学者
Amr Khaled(アムル・ハレド)    エジブト イスラム・テレビ伝道師
Steven Pinker(スティーブン・ピンカー)  カナダ/米国 言語学者・心理学者
Lawrence Summers(ローレンス・サマーズ) 米国  経済学者

Ian Buruma(イアン・ブルマ)     英国/オランダ エッセイスト
Yegor Gaidar(エゴール・ガイダル)  ロシア  経済学者・政治家
Rem Koolhaas(レム・コールハース)  オランダ 建築家
Richard Posner(リチャード・ポズナー)  米国  判事・作家
Charles Taylor(チャールズ・テイラー)  カナダ 哲学者
Fernando Henrique Cardoso(フェルナンド・エンリケ・カルドーゾ) ブラジル 作家・政治家
Howard Gardner(ハワード ガードナー,) 米国 心理学者・作家
Ivan Krastev(イワン・クラステフ)   ブルガリア 政治学者
Samantha Power(サマンサ・パワー)  米国 ジャーナリスト
Mario Vargas Llosa(マリオ・ペドロ・バルガス・リョサ) ペルー 作家・政治家

Noam Chomsky(ノーム・チョムスキー)    米国 言語学者・活動家
Neil Gerhenfeld(ニール・ガーシェンフェルド) 米国 物理学者・コンピュータ科学者
Enrique Krauze(エンリケ・クラウゼ)      メキシコ 歴史家
Robert Putnam(ロバート・パットナム)    米国 政治学者
Harold Varmus(ハロルド・バーマス)  米国 医科学者(ノーベル生理学・医学賞受賞者)
J.M. Coetzee(J.M. クッツェー)    南アフリカ 作家(ノーベル文学賞受賞者)
Malcolm Gladwell(マルコム・グラッドウェル) カナダ/米国 ポップ社会学者
Paul Krugmam(ポール・クルーグマン)  米国 経済学者・コラムニスト
Yusuf Al-Qaradawi(ユセフ・アル・カラダウィ)  エジプト・カタール イスラム法学者
J.Craig Venter(クレイグ・ベンター)   米国 生物学者・事業家

Paul Collier(ポール・コリアー)    英国 開発・紛争経済学者
Al Gore(アル・ゴア)          米国 気候変動活動家・政治家
Lee Kwan Yew(リー・クワン・ユー)  シンガポール  政治家・国父
V.S. Ramachandran(V.S.ラマチャンドラン) インド 神経科学者
Michael Walzer(マイケル・ウォルツァー)  米国 政治学者
Richard Dawkins(リチャード・ドーキンス)  英国 生物学者・作家
Ramachandran Guha(ラマチャンドラ・グハ) インド 歴史家
Lawrence Lessig(ローレンス・レッシグ)  米国 法律家・活動家(クリエイティブ・コモンズ創始者)
Tariq Ramadan(タリク・ラマダン)      スイス 哲学者・イスラム学者
汪 暉(Wang Hui)             中国 政治理論家

Alexander de Waal(アレキサンダー・デ・ワール) 英国 作家・西アフリカ活動家
Alma Guillermoprieto(アルマ・ギラモプリエト) メキシコ ジャーナリスト・作家
Steven Levitt(スティーヴン・レヴィット)    米国 経済学者・作家
Gianni Riotta(ジャンニ・リオッタ)   イタリア ジャーナリスト・政治コメンテーター
E.O,Wilson(E.O.ウィルソン)       米国 生物学者
Therese Delpech(テレーズ・デルペシュ ) フランス 政治学者
Fethullah Gulen(フェトフッラー・ギュレン)  トルコ 宗教指導者
Bernard Lewis(バーナード・ルイス)     英国/米国 歴史家
Nouriel Roubini(ヌリエル・ルービニ) イタリア/米国 経済学者
Martin Wolf(マーティン・ウォルフ)   英国 ジャーナリスト・コラムニスト

Daniel Dennett(ダニエル・デネット)       米国 哲学者
Jurgen Habermas(ユルゲン・ハーバーマス)  ドイツ 哲学者
Bjorn Lomborg(ビョルン・ロンボルグ)  デンマーク 環境活動家・統計学者
Olivier Roy(オリヴィエ・ロワ)       フランス 政治学者
閻学通(Yan Xuetong)          中国 政治学者
Jared Diamond(ジャレド・ダイアモンド) 米国  生物学者・歴史家
Vaclav Havel(バーツラフ・ハベル)   チェコ  政治家・劇作家
James Lovelock(ジェームズ・ラブロック) 英国 環境学者(ガイア理論提唱者)
Salman Rushdie(サルマン・ラシュデ)  英国 作家
Muhammad Yunus(ムハマド・ユヌス) バングラデシュ マイクロファイナンシャー(ノーベル平和賞受賞者)

Esther Duflo(エスター・デュフロ)    フランス 開発経済学者
Ayaan Hirsi Ali(アヤーン・ヒルシ・アリ) ソマリア・オランダ 活動家・政治家
Mahmood Mamdani(マフモード・マンダニ) ウガンダ  文化人類学者
Jeffrei Sachs(ジェフェリー・サックス)   米国 開発経済学者
Fareed Zakaria(ファリード・ザカリア)    米国 ジャーナリスト
William Easterly(ウィリアム・イースタリー) 米国 経済学者・援助懐疑派
Christopher Hitchens(クリストファー・ヒッチンズ) 米国 ジャーナリスト・作家
裴敏欣(Minxin Pei)             中国   政治学者・作家
Fernando Savater(フェルナンド・サバテール)   スペイン エッセイスト・哲学者
Slavoj Zizek(スラヴォイ・ジジェク)  スロベニア 社会学者・哲学者

中国はチベットを手放さない

中国地図


人口密度



 「影のCIA」の異名を持つ米国の軍事・情報サービス会社「ストラトフォー」のジョージ・フリードマンは、チベット問題に関する分析報告で二つの地図を示している。ひとつは中国の自然地図、もうひとつは中国と周辺諸国の人口密度を示した地図である。中国の沿岸平野部とガンジス川流域のヒンドスタン平原は人口密度が高い濃い色で染められているのに対し、広大なチベットはラサが小さな点に見える以外は空白地帯である。フリードマンは中国がチベットを手放すことはないと断言する。

 この報告は「中国の地政学とチベットの重要性」と題する。フリードマンは「中国は島国である」と言う。中国は侵入困難な地形に囲まれている。侵入するのも、占領するのも難しい。中国にとっても他国に侵入するのは不可能ではないが、極めて困難である。中国は大国ではあるが、行動において、他の大国とは非常に違う制約がある。

 中国の地理は二つの部分に分けられる。山岳、西部の不毛な地域と東部の沿岸平野。人口の圧倒的な大多数は沿岸平野部に集中している。東は太平洋。北と北西はシベリアとモンゴルで、人口はまばらで、移動は困難である。南は山岳とジャングルで中国と東南アジアを分ける。南西はヒマラヤ山脈。北西はカザフスタンで中央アジアの広大なステップがある。ロシアの沿海州と中国と朝鮮を分ける鴨緑江のある北東だけが通過できる地点である。これらの地点では軍事力のバランスは中国に有利である。

 戦略的に中国は二つの問題を抱えている。中国は海からの攻撃を防がなくてはならない。これは1930年代に日本がしたことである。最初に東北部に侵入し、中国の中心部に向かって南下した。英国と他の欧州勢力が19世紀に、これより小さい規模でやったことである。中国への第二の脅威は西部の人口の少ないところを通ってくる勢力である。モンゴルの北西からの侵入がそうであった。だが、欧州や日本の侵入がそうであったように、その侵入は中国国内の不統一に助けられた。

 従って、中国は3つの地政学的な要請を持つとフリードマンは言う。
1.大国が中央政府の防衛能力を弱体化させないように、内部の統一を維持する。
2.太平洋からの侵入を防ぐために強力な沿岸防衛を維持する。
3.通行不能な地理的特徴で中国の辺境をつなぎとめて、中国の周辺を確保する。言い換えると、現在の国境を守る。

 中国は太平洋の沿岸防衛を増強しており、新疆とチベットと二つの重要の支配を維持しようとしている。新疆は中国の中心部への進入路となり得るので、中国中心部の防衛は新疆に始まる。新疆が中国のものであれば、蘭州とカザクスタンの間を緩衝地帯にできる。中国はイスラム教徒の分離主義者がいても、新疆を領有するであろう。

中国にとってのチベットの重要性について、フリードマンは次のように分析している。

 パキスタン国境のヒンズークシからミャンマー国境まで、山脈を越えて軍の大部隊へ補給するのは不可能である。この国境の真南の地帯に沿ったところは、世界最大の人口集中地帯のひとつである。中国がチベットから撤退すると、人口移動を軍事的に妨げるものはなくなる。中国はこの人口がチベットに移住することを恐れている。そうした移住が起こると、チベットはインドの延長となり、インドの橋頭保になりえる。そのようなことが起きると、インドの戦略的前線は四川と雲南と直接、接することになる。

 チベットを保持することは中国の根本的な国家利益である。なぜなら、チベットはヒマラヤにおける中国のアンカーであるからだ。もし新疆が独立すれば。中国とユーラシアの間の緩衝地帯は崩壊する。新疆とチベット、特にチベットは領有するであろう。

 中国はダライ・ラマをインドの傀儡と見なしている。中国は、チベットの最近の騒乱はインド政府が扇動し、チベットの中国支配を不安定にさせるためにダライ・ラマを使っていると見ている。中国は、米国が背後におり、五輪で中国を困らせるためと、中央政府に圧力を加えるためにインドとダライ・ラマをけしかけていると見ている。中国はチベットで起きていることと米国が旧ソ連で支持し、鼓舞した「カラー」革命との間の類似性に着目している。

 中国はチベットを基本的な国家の安全保障としている。西側でのチベット支持の扇動は中国の国家安全保障の中心を攻撃する試みと見なしている。

 中国はチベットをめぐるこの圧力に対する対抗策をほとんど持たない。中国は政治・軍事的選択肢を持たない一方、経済的選択肢も持たない。経済的安定は米国への輸出に依存している。米国の金融市場から資金を引き揚げたら、それを別のところ移さなくてはならない。欧州に投資したら、欧州の金利は下がり、米国の金利は上がるであろう。欧州の資金は米国に流れるであろう。従って、中国が米国の市場から資金を引き揚げるという恐れは幻想である。

 中国の大きな危険は常に、中央政府の弱体化と地域主義の伸長である。フリードマンは、中国で起きているほころびとして、チベットでの事件を管理できなかったこと、ディーゼル燃料が非常に不足していること、米やその他の穀物の不足の3つを挙げている。これらは小さなことではあるが、中国のように金回りがいい国に起きるべきことではないとしている。

 中国はチベットを領有しなければならないし、領有するであろう。中央政府に高まっている圧力によって、事件を管理する能力が低下しているかどうか。中国が一連のミスをどのように収拾するかが今後を占うものになる、とフリードマンは結論づけている。

 フリードマンは1949年ハンガリー生まれ。ニューヨーク市立大学卒業。コーネル大学で博士号取得(政治学)。チュレーン大学教授、ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長などを経て1996年、「ストラトフォー」を設立。政府、軍、大企業に地政学的手法を取り入れた独自の分析を提供している。

テーマ : 中国 - ジャンル : 海外情報

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